地域医療の取組(研修制度)

研修制度(地域医療人の育成)

後期臨床研修 あいあいプログラム:概要

プログラム名

家庭医療・地域包括ケア 仁寿・川本あいあいプログラム

プログラム責任者

大畑 修三(加藤病院 副病院長 循環器内科)

研修期間

3年間

定員

1年あたり  2名 (×研修期間年数=総定員 6名)

プログラム概要

A.プログラムを展開する場や医療施設の地域背景や特長

仁寿会は、1932年に前身の川本病院を故加藤忠造が継承し、加藤病院としてその産声を上げた1964年に運営組織を医療法人仁寿会と改め、2011年には無医地区対策として開設された君谷診療所への取り組みによりへき地医療に携わる公益性の高い医療機関として社会医療法人に認定され今日に至っているこれまで、常に地域に密着した医療提供体制の適正なあり方を仁寿会は実践し続ける中で模索してきたその過程において私たちは、住み慣れた家、住み慣れた地域こそ最善の医療を受けることが出来る環境にあると確信しているそこで私たちは在宅医療をあるべき医療のひとつの姿として平成9年、病院内に在宅医療対策室を開設したこの対策室を中心として在宅医療・介護を一体とした基盤整備をすすめ、現在の仁寿診療所そじき、仁寿診療所ながひさ、在宅療養支援センターかわもと(ケアプランステーションかわもと、訪問看護ステーションかわもと、訪問介護ステーションかわもと、グループホームあいあいの家)など、社会医療法人仁寿会は、在宅療養支援病院加藤病院を中核施設とする、医療福祉介護複合事業体として発展を続けている

B.プログラムの理念、全体的な研修目標

これは、学習者が田舎を主たる学びのフィールドとして、患者中心の医療を専門職・地域協働で実践することを経験できるようデザインされたプログラムであるその目的は地域の人々を最もよく知り、地域包括ケアを実践できる医師の育成にあるさらにこの学習者中心を強く意図して開発されたプログラムとそれに関わるスタッフは、修了者がキャリアセルフリライアンス(自ら主導して自律的に自身のキャリアを形成する)を行える医師となることを支援しているコアバリューは、「あいあい」にある尊敬しあい、教えあい、学びあい、援けあいつつ医療関連専門職連携を基軸として、地域の人々の生きがいの実現に貢献することが「あいあい」である本プログラムの到達すべき一般目標は、日本プライマリケア連合学会専門医修得を含め、次の通りであるもちろん行動目標についても、教育介入によって期待できる具体的な行動変容を、これらの一般目標のそれぞれに対して設定している

  1. 保健・医療・介護・福祉の総合的視点をもって、患者・利用者中心に、有機的な医療関連専門職連携により、包括的な保健予防活動・診断・治療・コンサルティング・マネジメントを実践する基本を身につける
  2. キャリアセルフリライアンスの基本を身に付ける
    そして本プログラムの特徴として四つ挙げられるすなわちDiversity多様性:学習の場と人材、Interprofessional education専門職連携教育;質の高いヘルスケアチームによるケアの提供、Interactive双方向性;教えることは学ぶこと、学ぶことは教えること、Learner centered学習者中心;キャリアセルフリライアンス支援を有している

以上、本プログラムは、地域包括ケアを、アドバンストアクセスを保証しつつ、専門職連携ヘルスケアチームとして機能的かつ継続的に医療を提供する現場において経験学習のサイクルを回し続ける構造とした本プログラムに関わる学習者・患者・家族をはじめとする全ての人々の成長をもって、地域の自律的な社会健康課題への解決と地域の人々の健康長寿や生きがいの実現に貢献することが本プログラムの提供に責任を持つ社会医療法人仁寿会の願いである

C.各ローテーション先で学べる内容や特色

1年目は、社会医療法人仁寿会 加藤病院で総合診療専門研修Ⅰを6か月間、そして総合診療専門研修Ⅱとして同じく社会医療法人仁寿会 加藤病院で6か月間研修する両者の研修を通じて全人的かつ患者中心に診療する能力を練磨しつつ、家庭や集団との関わりの中で保健予防・医療・介護の課題を解決することを学ぶ
 2年目は必修研修としての内科、小児科、救急研修を学ぶ島根大学医学部附属病院において人の健康と臓器別・解剖別の疾患とそのマネジメントについて全人的に学習し、その一方で継続診療を担保するために総合診療専門研修である加藤病院へワンデイバックを予定している
 3年目は領域型研修と再び総合診療専門研修Iにあてる研修者の希望を取り入れ、自由度の高い研修にできるが、同時に最終的に地域包括ケア実践できる人材になってもらいたいと考えている

D.指導体制に関する特長

外来(初診・継続・救急)診療、訪問診療、往診、病棟診療、保健予防活動における臨床経験学習と一対一指導(hot seating含む)法を当研修プログラムの基本教育方略としている加藤病院が地域ぐるみ、家族ぐるみで地域の人々と関わってきた歴史と当地域が地域医療人をこのうえなく大切にする島根県西部の田舎という、安心して研修できる学習環境において経験する臨床経験と場面に応じた一対一指導法により、行動目標の達成や経験すべき主要症候に関する課題解決能力の向上を支援する加藤病院には上記診療科のごとく、望ましい領域別選択研修科目の研修医療機関である島根大学医学部付属病院から、多くの臨床指導医が来院し、診療活動に従事しつつ、常勤医への専門的な指導も行っている家庭医療専門研修中においても他の様々な専門技能を修得、維持、ブラッシュアップさせることが可能である特に外来・訪問診療研修はワンデイバックを随時取り入れ3年間を通じて患者の継続診療を行うこの3年間継続して患者・家族・地域を根気よく診つづけることこそが家庭医への強い動機づけとやりがいの気づきにつながる

E.医療関係職種、保健・福祉関係職種、地域の住民、医療機関の利用者などの協力を得る方法

これまでも協力医療機関や医療体験施設として初期研修医や医学部学生、地元の中高校生を積極的に受け入れてきたそのため、院内スタッフの間では医師を育てる意識が強くなっており、住民の方たちも地域全体で医師を育てようという気持ちが大きい地盤がある病院内掲示物での告知だけでなく、町の行事や生活習慣病、転倒防止リハビリなどに関する川本町等主催の地域講演会などに研修医を積極的に参加させ、地域住民との交流を促進していくそうして広く地域住民や医療機関の利用者様に理解を得るまた研修医による研修報告会には関係部署の職員の方や、地域住民の代表の方にも参加していただき継続的な協力を依頼していく

F.その他

当法人では、様々な医療を専門職の連携により有機的に提供する場を活用して、地域医療人育成支援を合言葉に2002年より介護福祉士の病院実習の提供を開始した2006年からは、島根大学医学部6年生の地域医療臨床実習、島根県の主催する医学部1-5年生への地域医療実習、同時に理学療法士・作業療法士の養成学校の病院実習を提供している2008年からは、初期医師臨床研修における地域・保健プログラムも実施しているこうして、中学生の看護体験から、医学部学生、医療関連専門職学生、ひいては大学院生あるいは初期医師臨床研修医まで様々な学習者を受け入れてきた歴史がある

G.モデルとなるローテーション例

1年目 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
総合診療専門研修I
(社会医療法人 仁寿会 加藤病院)
総合診療専門研修II
(社会医療法人 仁寿会 加藤病院)
2年目 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
必修内科
(島根大学医学部附属病院)
必修小児科(邑智病院または島根大学医学部附属病院) 必修救急科
(島根大学医学部附属病院)
3年目 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
領域別研修その他 総合診療専門研修I
(社会医療法人 仁寿会 加藤病院)

H.プログラムの全体構成(月単位の換算による)

総合診療
専門研修
総合診療専門研修Ⅰ
12カ月
総合診療専門研修Ⅱ
6カ月
領域別
研修
内科 6か月 小児科 3か月 救急科 3か月 その他 6か月

研修モデル例

研修モデルの例は「後期臨床研修 あいあいプログラム:研修モデル例」のページをご覧下さい。

専攻医の評価方法

【形成的評価(評価頻度・評価者・評価方法)】
 臨床経験学習、一対一指導法において直接観察法(360度評価・相互評価含む)、診療録監査法を用いて可能な限りタキソノミー別に形成的評価を行う一分間振り返りシート、SEAシートなど構造化された省察ツールを用いて自己評価とともに指導医のフィードバックを行い、これらはすべてポートフォリオの一部としてファイルに保管する  さらに、質問紙法や口頭試問により家庭医療や地域包括ケアに必要な知識の更新を行い、毎年7月、10月、1月の第3木曜日(午後)に研修目標の到達度の確認、指導医とのプログラム内容の再確認と研修ニーズのすり合わせを学習者のポートフォリオを活用して個人面談にて行っている同時に研修生活・個人生活における課題・悩みを共有し、学習者へのフィードバックと研修プログラムの改善を行う

【総括的評価(評価時期・評価者・評価方法)】
 修了前、毎年3月の第3木曜日に3年間の研修を省察する発表を行う保管されているポートフォリオファイルに関する面接とmodified essay questionにより研修目標の達成を確認し、修了書を交付する

【研修修了認定の方法(総括的評価結果の判断の仕方・修了認定に関わるメンバー)】
 最終的に日本プライマリケア連合学会の総合診療専門医の受験資格の獲得、専門医取得を持ってすべての研修プログラムを終了したいと思っている

プログラムの質の向上・維持の方法

【外部評価】
 医学教育フェローシップによるプログラムの評価と改善策の指導を受けるまた、島根家庭医総合医ネットワーク会議(仮称)によるプログラム改善を行う

【内部評価】
 研修担当者、学習者による定期面談や随時の討議により継続的な改善を図るまた医療法人仁寿会の組織変革風土・文化のもとに社会医療法人仁寿会医学教育委員会による定期評価と改善を行っていく