地域医療の取組(研修制度)

研修制度(地域医療人の育成)

初期研修医プログラム:具体的な指導方法の例示

具体的な指導方法の例示

地域保健・医療研修(中小病院)における主な研修場面

地域保健・医療研修(中小病院)における主な研修場面に沿った学習方略を例示として設定した
上記に沿った学習媒体としての、シミュレーションケースとその経過(モデル例)及び指導ポイントを例示した

主な研修場面/項目 指導医としての指導内容 教育方略、指導方法
(媒体を含む)
オリエンテーション 研修への準備を行う
学習環境の整備
基本的ルールの合意携帯・時間外連絡の方法・勤務条件の確認
仁寿会概要(理念、行動指針、倫理綱領、TEAM:Trust for patient信頼し尊敬しあおう・Empowerment(効果的コミュニケーションexchange information)情報を共有し、学びあおう・Attitude(行動志向)明るく楽しく寛容な態度を選ぼう・Mission(ミックス知識)患者中心の医療、事業概要)
基本能力の確認
患者―医師関係、安全管理、チーム医療、問題解決能力、症例提示について記述できる
One to one
グループ討議(SGD)
PBL
講義
外来診療 外来担当医師を代え、複数医師の外来に同席する
できるだけ多くの症例を経験する
以下の点を指導する

・現症、病歴、家族歴等詳細に情報を集め、カルテに記載する
・患者及び家族と適切な面接ができ、その訴え、希望(くみ取った意を確認することを含む)を把握する
・心身相関の視点から診察ができ、カルテに記載できる
・診断に必要な検査の意義を理解し、患者への説明と同意を得て、指示を出し、その結果を評価できる(病名に合致した検査、薬の使い方)
・診察の結果、治療方針について患者家族にわかる言葉で説明できる
・生活環境、経済的環境にも配慮した生活指導できる

実演見学
ロールプレイ
予診
One to one
(hot seat setting: 
基本的手技の実習
基本的検査の実習)
SGD
PBL
カンファレンス
講義
(保険診療の手引き・療養担当規則など含む)
VTR学習
(DV録画)
救急診療 地域における救急患者の診断ができ、治療方針が立てられるよう、以下の点を指導する
・救急医療に必要な医療器具を準備できる
・地域の疾病動向を把握している
・同患者に装着・または処置できる
・ACLSを行える
・必要な情報を収集できる
・バイタルサインをチェックし、必要な処置がとれる
・心電図モニター等必要な検査の緊急性の高い所見について知識があり、必要な処置がとれる
・患者の状態を把握し、専門医に相談することができ、三次医療機関への転送ができる
実演見学
ロールプレイ
One to one
(hot seat setting)SGD
PBL
講義
病棟診療 指導医のもとで、症例を受け持ち、診断、状態像の把握と重症度の客観的評価法を習得し、課題解決できる
・患者に起こりうる事態について予測し、スタッフに予指示ができる
・入院した患者及び家族の心情を理解し、その希望を受けとめることができる
・必要な検査、治療について患者及び家族に説明し、かつ得られた結果についてもきちんと説明し、カルテに記載する
・医の倫理を実践できる
・生活指導を含めた退院計画の作成を行う
・患者中心に課題を解決するために、看護職をはじめとした、専門職連携を適切に行える
実演見学
ロールプレイ
予診
One to one
(hot seat setting: 
基本的手技の実習
基本的検査の実習)
SGD
PBL
カンファレンス
講義
(保険診療の手引き・療養担当規則など含む)
VTR学習
(DV録画)
研究プロジェクト
専門職連携 ・専門職連携とは患者中心に動くことであることを理解し実践できる
・各専門職が何をすることができ、何をすることができないかを説明できる
・仁寿会TEAMスピリットを説明できる
・カンファレンスに参加し他職種の意見を聞き入れ、尊重しつつ意見を述べることができる
・患者の病態、検査結果を専門職連携の中で、多角的、広い視野でとらえる見方を身につける
・在宅緩和ケアプランを立案できる
専門職体験実習
One to one
SGD
PBL
カンファレンス
(NST,リハビリテーション、各種委員会)
講義、抄読会
地域の研究会、
学会、健康づくり
・抄読会で発表ができる
・全人的アプローチの基本を理解できる
・社会保障制度における健康づくり、健康教室の意義を説明することができ、企画、講演できる
自習(宿題を含む)
One to one
(hot seat setting) 
SGD
講義
VTR学習
(DV録画)
研究プロジェクト
グループ討議
VTR学習
学会、研究会への講演参加
健康教室の企画、講演参加
医療の社会性 医療の持つ社会的側面の重要性を理解し、社会に貢献できるよう以下の目標を達成できる
1) 保健医療法規・制度を理解し、適切に行動できる
2) 医療保険、公費負担医療、介護保険を理解し、適切に診療(特にカルテの記載、公的文書の記載、説明と同意)できる
3) 医の倫理、生命倫理について理解し、日々の診療および連携において実践できる(利用者権利行使支援・安全・満足・科学的根拠・公開を保証された医療の提供)
4) 医薬品や医療用具による健康被害の発生防止について理解し、適切に行動できる
ロールプレイ

シミュレーション
救急外来副当直

訪問診療
訪問看護
訪問リハビリ
訪問介護
在宅医療を支えるチーム医療に必要な理念を持ち技術を身につける
・訪問診療に同行する
・訪問看護、訪問リハビリなどに同行し、実地における客観的評価および必要な処置を一つ行える
・在宅医療における療養管理指導が行える(在宅医療に必要な医療技術を実践できる)
・他のメンバーの心情が理解できる
フィールドワーク
(訪問サービスへの同行体験)
カンファレンス
介護保険関係施設との連携 地域において疾病、障害を抱えつつ生活するために必要なサポートシステムを理解し、社会復帰の援助ができる
・退院後の在宅生活を支援するための地域支援体制について理解する(老人保健施設、特別養護老人ホーム、グループホーム、ケアハウス等)
・支援施設スタッフの心情、抱えている問題点について理解する
・介護保険に関与する医師に望まれる点の理解
フィールドワーク
カンファレンス
(退院前カンファレンス等)
主治医意見書の模擬記載
模擬ケアプランの作成

緩和ケア病棟や緩和ケアチームにおけるローテート研修の場合

主な研修場面 指導内容 指導方法(媒体を含む)
オリエンテーション 外来診療への準備を行う。 ロールプレイ、講義
外来診療 緩和医療担当医師の外来に同席し、緩和医療に関する多くの症例を経験させ、以下の点を指導する。
・ 現症(身体、精神症状、社会的問題、実存的問題のアセスメント、医療や療養に関する希望など)、病歴、家族歴等詳細に情報を集めることができる。
・ 緩和医療専門医へのコンサルト:専門的治療の必要性を理解し、適切にコンサルトできる。
・ 告知をはじめとする「悪い話を伝える」具体的な方法と注意点を具体的にあげることができる。
・ コミュニケーションの困難な患者と適切な対応ができる。緩和医療を必要とする患者の持つ心理的な問題を理解できる。
・ 緩和医療のコンサルテーション医療を経験する。
・ 緩和医療を必要とする患者の家族の持つ心理的な問題を理解できる。
予診
グループ討議
オリエンテーション 病棟診療への準備を行う。 ロールプレイ、講義
病棟診療
(コンサルテーション診療を含む)
指導医のもとで症例を受け持ち、診断、病棟の把握と重症度の客観的評価法を修得させながら、以下の点を指導する。
・ 身体症状が評価でき、必要な際に専門医に適切にコンサルテーションすることができる。
・ 精神症状が評価でき、必要な際に専門医に適切にコンサルテーションすることができる。
グループ討議
  ・ 社会的問題が評価でき、必要な際に適切にMSWにコンサルテーションすることができる。
・ 告知をはじめとする「悪い話を伝える」具体的な方法と注意点を具体的にあげることができる。
・ コミュニケーションの困難な患者と適切な対応ができる。
・ 人生観、宗教観及び患者の持つ実存的問題が評価でき、それに配慮した診療を行うことができる。
・ 薬物療法及び各種治療法、治療計画が作成できる。
・ 緩和医療の提供形態を理解できる。(緩和ケア病棟、外来診療、コンサルテーション診療、在宅医療)
・ 緩和療法的アプローチの基本を理解できる。
・ 家族の持つ問題を評価し、適切に対応することができる。
・ チームアプローチの重要性を理解し、コメディカルスタッフとともに診療を行うことができる。
講義

VTR学習

症例検討・リサーチミーティング 代表的な症状(疼痛、呼吸困難、食欲不振、倦怠感、抑うつ、不安、せん妄など)をスクリーニングできる魅力ある症例カンファレンスにする。
・ 実際に行われているミーティングに参加し、プレゼンテーションを行うことができるよう指導する。
・ 緩和医療に関する社会資源、地域ケアの方法を列挙できるよう指導する。
・ コメディカルスタッフの専門性を理解することができるよう指導する。
グループ討議
講義、抄読会 一般科診療において緩和医療に配慮した診療ができるよう、以下の点を指導する。
・ 代表的な症状(疼痛、呼吸困難、倦怠感、抑うつ、不安、せん妄など)に関する最新の知見を学習するとともに、文献の批判的吟味を行うことができる。
・ 緩和医療的アプローチの基本を理解できる。わが国における緩和医療の歴史と現状を理解できる。
・ 望ましい緩和医療のあり方について理解することができる。
・ 緩和医療に関する倫理的問題について列挙し、その解決方法を例示できる。
自習

ケーススタディー
VTR学習
講義

グループ討議

病棟カンファレンス 研修医が緩和医療におけるチーム医療に必要な技能と態度を身につけるよう、以下の点を指導する。
・ 患者・家族がチームの一員であることが理解できる。
・ 各職種の役割を理解し、多職種アプローチを経験する。
・ 患者の心理社会面の問題を把握できる。
・ 自分の陰性感情や失敗を言語化できる。
・ 他のメンバーの心情が理解できる。お互いの意見を尊重しつつ、自分の意見を主張できる。
スタッフカンファレンス
緩和ケア病棟・在宅緩和医療研修(院外) 様々な診療形態における緩和医療について理解し、経験できるよう以下の点を指導する。
・ 緩和ケア病棟、緩和医療ケアチーム、在宅ケアの特殊性を理解することができる。
・ 地域における緩和医療に関する社会資源を利用することができる。
・ 地域ケアにおける訪問看護ステーション、ヘルパーステ一ションの役割と重要性を理解できる。
・ 必要な際に、診療所、訪問看護ステーション、ケアマネジャーに適切に患者を紹介することができる。
・ 介護保険を適切に利用することができる。
講義グループ討議

学習者評価方法

1.直接観察法(認知領域:問題解決、精神運動領域:スキル、行動)

体系的にチェックリストを用いて評価する

2.診療録監査法(精神運動領域:行動)

体系的にチェックリストを用いて評価する

3.質問紙法(情意領域:態度)

情意領域について質問を行う

4.自己評価法(教育目標分類全般)

一分間実習振り返りシートを用い、自己による振り返り、ポートフォリオ評価をしつつ指導者によるフィードバックを行う

5.科目別評価

別紙

6.最終評価

7.その他

シミュレーションケースとその経過
(モデル例)
指導のポイント
事例1 咳、発熱で80歳の男性が入院
患者は妻と二人暮らしであり、軽い脳梗塞の既往があり食事時、しばしばむせる傾向があった。
歩行は可能であるが、熱が出てからは寝ていることが多い。
胸部X-Pでは両肺に陰影が認められ、嚥下性肺炎が疑われた。食べられない状態で数日間家で寝ていたため、栄養状態はあまり良くなく、仙骨部にすでに軽度の褥瘡が認められている。
肺炎の治療を行うとともに、栄養管理、褥瘡の管理も必要と考えられた。また、長期臥床が続いたため、下腿の筋力の低下が認められている。
本人及び妻は、治療後はまた在宅生活が送れることを希望している。
抗生剤治療により肺炎は改善した。
ロ腔ケアによりロ腔内はきれいになり、食事形態の変更や食事体位の指導により誤嚥は少なくなった。
患者は退院することになったが、まだ下肢のカは十分ではなく、もう少しリハビリが必要と判断された。
理学療法士が退院前訪問し、家屋の改造を行った。
訪問診療、訪問看護、訪問リハビリが行われることになった。
・ 日常しばしば遭遇する疾患に対する知識
・ 効率的な医療(医療費保険診療についての理解)
・ 身体的側面のみならず生活面、家族的な背景も考えた診療を行う
・ 状態より考え必要な検査の選択
・ 検査結果を判断し、そのプロセスを考える
・ 当該疾患のみならず全人的に状態を把握
・ ADL・栄養状態を判断し、必要な治療を行う
・ チーム医療について理解する
・ 褥瘡防止委員会、NSTについての理解と委員会を通じてのチーム医療、委員会へ参加し、ともに考える
・ 嚥下障害の段階についての理解(嚥下造影)
・ ロ腔機能についての理解、歯科医との連携
・ 在宅復帰に向けた早期のリハビリについての理解
・ 介護予防のための社会支援について理解
・ 栄養指導、ロ腔ケア指導、感染予防の指導
・ 在宅リハビリについての理解
・ 介護保険についての知識
・ ケア会議への参加
・ 主治医意見書の書き方のポイント
・ 訪問看護、訪問リハビリについての知識
・ 通所リハ、通所介護利用についての理解
事例2 めまい、吐き気で入院した82歳の独居高齢者
入院時食事が十分摂れていない。
徘徊、夜間不穏などの認知症症状も認められている。
頭部のCT検査ではめまい、認知症の原因となる疾患は認められなかった。
点滴補液にて症状は軽快ステーションに近い部屋に移し、同時に訪室回数も増やし観察機会を多くした。
声かけを多くし、コミニュケーション機会を多くした。
幸い認知症は代謝異常、環境変化によるもので、入院数日で軽快した。
症状軽快後、患者は在宅での生活を望んでいる。
介護保険の申請し、社協に配食サービスを依頼また、ボランティアグループの弁当も受けることになった。
夕食は近所に住む娘さんが届けることにした閉じこもり予防のためデイサービスも利用。
・ めまい、代謝異常など、認知症の発症背景の知識の習得
・ 必要な検査の選択とその理解
・ 本人、家族へ現在の状態及び生じうる事態についての説明
・ 治療方針についての説明
・ 治療に加え、身体拘束ゼロ医療安全について配慮
・ 家族に身体拘束ゼロの意義と安全対策の意義について説明し理解を得る ・ 身体拘束ゼロ委員会、安全対策委員会に図り、チームとして対策を考える
・ 介護保険の仕組みを学ぶ
・ 在宅自立支援のための支援体制を整える
・ 家族との相談
・ 利用できるマンパワーについての知識(ケースワーカー、保健師)
・ ボランティアの活用
・ 痴呆疾患センターの役割を学ぶ
事例3 80歳の胆管癌術後再発患者が自宅での治療を希望(在宅ターミナルケア)
食事は十分に摂取できない。また、腰痛が著明である。
患者自身は在宅でのターミナルを願っているが、家族は痛みの管理、緊急時について不安を持っている。
・ 在宅医療の適応を判断するための情報収集
・ 訪問診療に必要な医療器具・薬剤についての知識
・ ターミナルケアに必要な医療についての理解
・ 麻薬の使い方についての理解
・ 法的ルールについての理解
・ ターミナルケアについて家族への説明
・ 緊急時対応体制の確立
・ 相談体制の確立
・ 地域の開業医さんとの連携、訪問看護との連携
・ 患者家族の健康感・死生観・宗教観を受容する
・ 末期患者に対する栄養補給についての理解(栄養方法、適応)
事例4 45歳糖尿病、高血圧、肥満で入院した患者
体重80kg身長168cm、毎晩飲酒3合、タバコも40本吸っている。
今回、血圧が上昇し、めまいが出たため入院したがあまり病識はない。
奥さんを交えた栄養相談を行った。
また、運動療法士のメニューによりリハビリ室で運動療法を施行。
まず3ヵ月で3kgの体重の減量を予定した。
肺がんばかりでなく心臓疾患、脳血管疾患におよぼす喫煙の影響について説明し禁煙教室への参加を勧めた。
この結果、患者は禁煙教室に参加した。
患者は血圧が安定し、症状がとれたため退院することになったが、外来糖尿病管理看護師及び保健師に連絡し、引き続き、禁煙教室、糖尿病教室に通って貰える体制を整えた。
・ 生活習慣と疾病との関係の理解
・ これから起こり得る疾病、障害についての知識
・ 患者に指導するべき栄養、運動についての知識
・ 生活習慣改善のためのチーム医療の理解と連携
・ 健康づくり教室への参加(糖尿病教室、肥満予防教室)
・ 禁煙教室の企画参加、自分自身が講師として指導
・ 栄養相談、運動指導の指示
・ 患者にわかってもらう、わかりやすい言葉での指導
・ 指導を受け入れてもらえる人間関係の構築
事例5 42歳女性両親および次男と同居
高校生頃よりうつ的傾向あり卒業後就職するも、人間関係がうまくいかず退職。
家に閉じこもりがちとなり、統合失調症の診断で入退院を繰り返す。この頃、関節リウマチも発症。平成14年4月より在宅生活を続けている。母親に対して攻撃的な態度。
精神科受診は不定期ながらも継続していたが、関節リウマチの治療は中断している。同年9月より保健師OTの同行訪問を開始。
全身の関節に軽度~中等度のROM制限と変形、疼痛あり。
生活範囲は居室~トイレ間の歩行が主で、時に家族の介助で車椅子で出掛ける以外はベッドに臥床している。
入浴・整容介助、健康状態チェックを行いながら、本人と母親の関係調整。生活範囲の拡大、整形外科受診をすすめた。
平成15年春頃から食堂で家族とともに食事するようになる。
平成16年1月、母親の入院をきっかけに母親へ受容的な態度で接するようになり、母親のストレスが軽減。
受診に対しても、拒否的でなくなり、精神科・整形外科へ定期的に受診するようになった。
・ 身体障害者手帳の申請
・ 保健師の訪問による家族指導(精神的支援、受診の勧め、訪問リハ)
・ 在宅での環境整備・住宅改修
・ 閉じこもり生活の改善
・ 廃用症候群予防
・ 介護保険制度・訪問診療・障害の理解
事例6 77歳、男性家族構成は3世代、主な介護者は妻78歳
平成14年6月、すくみ足、小刻み歩行が出現し、パーキンソン病の診断、内服を開始し症状は改善した以後、全体的には徐々に病状進行傾向であったが、屋内歩行、セルフケアはなんとか自立していた。平成15年3月28日、発熱のためADL全介助となり、15年4月2日、胸部レ線所見および血液検査所見にて、急性肺炎の診断で入院となり、安静臥床と抗生物質点滴投与が行われた。
約2週間の安静のため、座位保持困難で座位耐久性も低下していたため、ベッドサイドでの座位訓練、座位耐久性訓練よりリハビリ開始した。
数日で約30分~1時間のギャッジベッドでの座位が可能となり、車椅子でリハ室へ出るとともに、食事は食堂で食べることとした。
1週間後には起居動作可能となり、移乗介助にて車椅子移動、排泄はポータブルトイレ使用し、尿意・便意も確実となった。
5月中旬には、食事は食堂で自立。
食堂までの歩行は歩行器使用にて。安定リハ室では四脚杖による歩行訓練。病棟では看護師による起居動作、移乗を監視している が、動作緩慢であるが確実となった。歩行安定と耐久性向上と家庭復帰の準備としての生活リハのために、約1カ月間老人保健施設を利用、試験外泊、家屋チェックの後、ほぼ以前の屋内歩行レベルで家庭復帰した。
・ パーキンソンの治療、在宅に向けてのリハビリ、廃用症候群の予防
・ 特定疾患についての理解と公的補助についての理解
  (申請書類の書き方)
・ 生活リハビリ・リハビリテーション看護
・ 退院前訪問・家屋チェック、老人保健施設・チーム医療、在宅生活支援
事例7 56歳男性平成5年(44歳)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の診断を受けた徐々に進行し寝たきりとなる。
平成9年(48歳)、呼吸障害、嚥下障害も進行したため入院し、気管切開・人工呼吸器装着、胃瘻造設・経腸栄養となった。
本人・家族とも在宅生活を希望したので、多職種による在宅医療体制を組み、約8年間フォローしている。
現在、自発呼吸はなく、24時間365日人工呼吸器を装着している。
この間、肺炎や呼吸管理のためなど年に1~2回の入院ありまた、年に1回ではあるが、病院スタッフと共に1泊旅行を楽しんでいる。最近 は、歯科の協力によりマウスピースにスイッチを埋め込んだ意志伝達装置を使って、友人や嫁いだ娘とのメールも可能になった
・ パーキンソンの治療、在宅に向けてのリハビリ、廃用症候群の予防
・ 特定疾患についての理解と公的補助についての理解
  (申請書類の書き方)
・ 生活リハビリ・リハビリテーション看護
・ 退院前訪問・家屋チェック、老人保健施設・チーム医療、在宅生活支援

評価における紹介と例示

地域保健・医療研修(中小病院)における評価を例示として設定した。
上記に沿った、指導医として評価すべき重要なもの及びどのような水準で達成とするかを例示した。

地域保険・医療研修(中小病院)における評価例

指導医として評価すべき重要なもの
(以下の点を中心に研修医に指導する)
どの程度できればいいのか(例)
保健・医療・福祉の総合的視点から治療を考える基本を身につける。 地域でいかに生活するかという視点から治療を考えることができる。
生活環境、経済的環境にも配慮した医療を行うことができる。
健康づくりのメンバーとして参加し、計画作成、行動ができる。
退院後の生活にも配慮し、地域の支援体制を理解できる。
個人の尊厳を守り、安全対策にも配慮できる。 安全対策、感染対策、身体拘束ゼロについて理解し、会議に参加し、対策について検討することができる。
チーム医療を理解できる。 褥瘡予防委員会、NSTなど、看護、リハビリ、薬剤科など、関係スタッフとの会議に参加し、積極的にチーム医療を推進できる。
ターミナルケアを含んだ在宅医療を理解し、実践できる。 在宅医療〔ケア)、在宅ターミナルケア、在宅口腔ケアなどを経験する。
在宅医療(ケア)、在宅ターミナルケアに必要な医療について述べることができる。
在宅ケアに必要な医療機器、薬剤について述べることができる。
在宅ケアにおける感染予防について家族に指導できる。
ターミナルを迎えた患者、家族の心情を理解し支援ができる。
在宅ケアスタッフとの良好な人間関係を構築できる。
行政と連携し、地域の保健活動に参加、立案ができる。 生活習慣病予防のための講演会、教室、運動療法などに参加する。
デイケアなどの社会復帰や地域支援体制を理解する。 居宅介護事業所、デイサービスセンター、デイケアなどの社会復帰や地域支援体制を経験する(地域支援体制として、老人保健施設・居宅生活支援事業、訪問看護等を含む)。
訪問診療、訪問看護を経験する。
介護老人福祉施設、介護老人保健施設、グループホーム・ケアハウス、デイサービスセンターなど介護施設を経験し、その意義について述べることができる。
保健・医療・介護(福祉)が一体となったサービスを提供することができる。

緩和・終末期医療研修における評価例

指導医として評価すべき重要なもの
(以下の点を中心に研修医に指導する)
どの程度できればいいのか(例)
保健・医療・福祉の総合的視点から治療を考える基本を身につける。 地域でいかに生活するかという視点から治療を考えることができる。
生活環境、経済的環境にも配慮した医療を行うことができる。
健康づくりのメンバーとして参加し、計画作成、行動ができる。
退院後の生活にも配慮し、地域の支援体制を理解できる。
個人の尊厳を守り、安全対策にも配慮できる。 安全対策、感染対策、身体拘束ゼロについて理解し、会議に参加し、対策について検討することができる。
チーム医療を理解できる。 褥瘡予防委員会、NSTなど、看護、リハビリ、薬剤科など、関係スタッフとの会議に参加し、積極的にチーム医療を推進できる。
ターミナルケアを含んだ在宅医療を理解し、実践できる。 在宅医療〔ケア)、在宅ターミナルケア、在宅口腔ケアなどを経験する。
在宅医療(ケア)、在宅ターミナルケアに必要な医療について述べることができる。
在宅ケアに必要な医療機器、薬剤について述べることができる。
在宅ケアにおける感染予防について家族に指導できる。
ターミナルを迎えた患者、家族の心情を理解し支援ができる。
在宅ケアスタッフとの良好な人間関係を構築できる。
行政と連携し、地域の保健活動に参加、立案ができる。 生活習慣病予防のための講演会、教室、運動療法などに参加する。
デイケアなどの社会復帰や地域支援体制を理解する。 居宅介護事業所、デイサービスセンター、デイケアなどの社会復帰や地域支援体制を経験する(地域支援体制として、老人保健施設・居宅生活支援事業、訪問看護等を含む)。
訪問診療、訪問看護を経験する。
介護老人福祉施設、介護老人保健施設、グループホーム・ケアハウス、デイサービスセンターなど介護施設を経験し、その意義について述べることができる。
保健・医療・介護(福祉)が一体となったサービスを提供することができる。